コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

『ダーリンは外国人』

おくればせながら『ダーリンは外国人』(小栗左多里 メディアファクトリー)を読んだ。いやぁ、おもしろかった。
おもしろかったが、首をかしげた個所もふたつばかり。今日はその話。

ハンタージョーク

ユーモア感覚のちがいを説明する個所で、laughLAB.co.uk(http://www.laughlab.co.uk/winner.html)によってえらばれた、「世界で一番おもしろいジョーク」が例としてあがっていた。原文はこうである。

A couple of New Jersey hunters are out in the woods when one of them falls to the ground. He doesn't seem to be breathing, his eyes are rolled back in his head. The other guy whips out his cell phone and calls the emergency services. He gasps to the operator: "My friend is dead! What can I do?" The operator, in a calm soothing voice says: "Just take it easy. I can help. First, let's make sure he's dead." There is a silence, then a shot is heard. The guy's voice comes back on the line. He says: "OK, now what?"

ちょっと訳してみますね。

ふたりのニュージャージーのハンターが外出し、森にはいったときに、ひとりが倒れる。呼吸がとまっているようで、白目をむいている。かたわれが携帯電話をとりだして救急センタに電話をする。オペレータにあえぎながらつたえる。「ともだちが死んでる。どうすればいいんだ?」オペレータは冷静な声でなだめるように言った。「とにかくおちついてください。だいじょうぶ。まず、彼が死んでいるか、はっきりさせましょう」しばしの静寂があり、銃声がきこえる。電話口に男の声がもどる。男は言う。
「はっきりさせたよ。それで?」

むつかしいなあ、これ。キーは"make sure"でしょう。"Let's make sure he's dead."というのは、この文脈では「彼が死んでいるかどうか、ちゃんと確認しましょう」という意味だが、「彼を確実に死んだ状態にしましょう」ともとれる。これは英語表現に依存した駄洒落である。
著者はこれを読み、ダンナが笑って自分は笑えなかったことを、ユーモア感覚のちがいとしているが、話はもっと単純だと思う。

「愚妻」にカリカリする愚

「愚妻」という表現はケシカラン、と、ダンナが怒っている*1。しかし、この場合の「愚」というのは、自分の謙譲語だから、「愚妻」というのは「おろかな妻」などという意味では全然なくて、ただの「わが妻」という意味なんですよ。
でも、Google等で検索してみると、「おろかな妻」という意味でつかっているおろかな人が多いような気がしますが。
広辞苑ではどう書いているかなと調べてみると、

ぐ【愚】
 (1) おろかなこと。くだらないこと。「―の骨頂(コツチヨウ)」「暗―」「―問」
 (2) 自分または自分に関する物事についてへりくだっていう語。「―按ずるに」「―妻」

(2)の意味ですね。ところが「愚妻」をひくと、

ぐ‐さい【愚妻】
 自分の妻の謙称。

となる。これじゃあわからんじゃないですか。

書籍データ

ダーリンは外国人
小栗左多里

出版社 メディアファクトリー
発売日 2002.12
価格  ¥ 924(¥ 880)
ISBN  4840106835

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画像

草。

追記(2005年05月06日)

ジョークの訳文と文章を修正しました。

*1:そういえば、三谷幸喜もエッセイの中で「妻(小林聡美)は「愚妻」といった表現をとても嫌う」というようなことを書いていた。