全身全霊をかけてバカをやる。―鯨統一郎『タイムスリップ×××』シリーズ
かなり前に書店で『タイムスリップ森鴎外』という本をみかけ、森鴎外という名にひかれ購入した。
大して期待せずに一読、驚嘆した。かってSFを読みあさったものとして「タイムスリップもの」などには食傷しているはずだったのに、たのしく読んでしまったのだ。
内容はタイトルどおり、森鴎外が現代にタイムスリップする話で、出会うのは、茶髪で「チョームカツク」なんて言葉をつかう女子高生、麓うららとその仲間たち。この凡庸ともいえる設定をどう料理するかが作者の腕なのだが、鯨統一郎は入念な調査と奔放な想像力で、みごとなバカ日本文学史ミステリを作りあげている。
われわれは物語をかけぬけながら、作者のさまざまなブービートラップにひっかかり、「バカだ、ハハハハハ」と笑いつづけるしかない。
その後、物語は麓うららをタイムトラベラーとして『タイムスリップ明治維新』、『タイムスリップ釈迦如来』とつづく。どの作品も、作者のばかばかしさにかける情熱にあふれ、「一杯くわされたよ」というさわやかな読後感をのこす。
物語の性格から、挿話をひとつも紹介できないのが残念だ。是非読んで笑ってください。
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菜の花畑@千葉そごう前広場。