コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

三角形の内角の和は、日本でも、マラッカ海峡の底でも、宇宙の果てでも180度です。

『世にも美しい数学入門』(小川洋子藤原正彦 ちくまプリマー新書)読了。
小川『博士の愛した数式』洋子と藤原『心は孤独な数学者』正彦の対談。イラストは南『本人の人々』伸坊。数学啓蒙書の最強トリオだ。
テーマはもちろん数学の美しさ。そして数学者の純粋さとあやうさ。二人が三角数や四角数、素数\piといった、数学の美を簡単に体感できる例について、実にうれしそうに語り合うのを横で聞いているのがたのしい。また、ハミルトンやラマヌジャンなど、純粋で、それゆえ時として社会と折り合えない数学者たちの人生や逸話も興味ぶかい。「なぜノーベル賞に数学部門がないのか」の謎解きがわたしには初耳で、笑った。
一番好きなのはフェルマーの定理を証明するためのワイルズの七年にわたる孤独な努力と、それを可能にした谷山=志村予想のくだり。しかし発表した証明には穴があった。一年間のさらなる苦闘のすえ「もはやこれまで」と覚悟した際、いづこともなくあらわれ、穴をふさぎ去っていったのは素浪人*1、岩澤理論である。泣けた。
まるで『博士の愛した数式』の老教授と家政婦が再会したような、うれしい一冊。

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櫻。かな?

書籍データ

世にも美しい数学入門
藤原 正彦 / 小川 洋子
筑摩書房 (2005.4)
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*1:Akimbo脚色。