コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

「ものの見えたる」人たちの二次大戦総括

もの覚えは悪いがもの忘れも悪いわたしはまだ第二次大戦について勉強しているが、最近は食傷ぎみだ。特に世にあふれる右や左の旦那衆が書いたアジ演説まがいの本を見ると眉につける唾も枯渇するほどで、要するに疲れた。
「なにか、あの戦争をいろいろな視点からちゃんと分析した本はないかな。できれば新書で」とムシのよいことを考えていたら、なんとありました。
『あの戦争になぜ負けたのか』(文春新書510)は、半藤一利保阪正康中西輝政戸高一成福田和也加藤陽子の六人による長い対談。
二百三十万人以上の戦死者と内外数千万の犠牲者をだしたといわれる大東亜戦争について、だれかに肩いれすることなく、また、外交、政治、人種、国内情勢どの視点にも偏することなく概観し、まとめている。
正直、あれだけ報道がされながら、わたしにはあの戦争は謎だらけだった。なぜ日本が孤立し、よりによってナチスドイツと同盟をむすんだのか、勝機のない戦争を回避する機会はあったのか、国民や新聞はどう反応していたのか、なぜ特攻などという狂気が実現してしまったのか、そして、なぜ戦死者の過半の死因が餓死なのか。
本書はそれらの疑問に、被害者や被抑圧者の視点ではなく、対談者たちの豊富な知識と見識をまじえた「歴史の視点」からの解釈をあたえ、それらの事象は決して一問一答式の単純な因果関係によるものではなく、時代の流れを見ないと理解できないという、いわば「歴史のあたりまえ」を教えてくれる。
これで八百円。得した!!
惜しむらくは書名が最悪だ。「こうすれば勝てた」という誇大妄想的な「歴史のif」の本に見える。
中身は高校歴史の副読本にもできるほど上質なのに、それだけが残念である。

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秋。