コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

昭和天皇の歌集

ふとしたきっかけで昭和天皇の御製を読みたくなり、「天皇歌集 みやまきりしま」と「天皇皇后両陛下御集 あけぼの集」を入手しました。
実は「二冊あるということは、収録された歌の時代が違うのかな」と思いえいやっと購入したのですが、見くらべてみると、ずいぶん重なっています。ひょっとしたらほとんど同じか、と思うくらい。「みやまきりしま」のほうには色々な人の解説や挿絵が入っていますから、それも興味深いですが、歌集としては「あけぼの集」をおすすめします。まあ、おすすめされても買う人は余りいないと思いますが。

昭和天皇御製の特徴は、素直で柄が大きいこと。決して技巧的ではなく、こう、すっと出てきたような感じの歌が多いです。それでいて印象的なのですね。きっと歌を詠むことが日常の一部になっているのでしょう。
ちょっと引いてみます。

    河水清 大正十五年

広き野をながれゆけども最上川海に入るまでにごらざりけり


    松上雪 昭和二十一年

ふりつもるみ雪にたへていろかへぬ松ぞををしき人もかくあれ


    六十の賀

ゆかりよりむそぢの祝ひうけたれどわれかへりみて恥多きかな
むそとせをふりかへりみて思ひでのひとしほ深きヨーロッパの旅

この「ヨーロッパの旅」は、まだ皇太子であったころの大正十年に半年をかけてヨーロッパ五国を歴訪したことでしょう。年齢でいえば十九歳から二十まで。若かったし、折りにふれ思いだすほど楽しかったのでしょうね。
あと好きなのは、美智子皇后の御歌。こちらはもう少し現代風で、やさしいまなざしが心にしみます。

慰霊地は今安らかに水たたふ 如何ばかりか君等水を欲りけむ

これは硫黄島を訪問した際の御歌だそうです。「欲り」は「ほり」で「欲しい」の古語。君等はもちろん硫黄島で戦った兵士たちのこと。