コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

オフ会の思い出

オフ会が好きだ。
特に現実世界での利害関係はないけれど、会話の波長があう人たちと、ビールでも飲みながら、駄話からウンチクまで、いろいろな話に花を咲かせていると、本当に時間を忘れる。
今日はそんな飲み会でのエピソードを。

秋葉原の居酒屋「村役場」にて

いつものようにいろいろな話題でもりあがっているときに、ある科学者に話がうつったのですが、その科学者の名前がでてきません。
「あの、ほら、知らない?」、「?」、「いや、有名な人」、「なにした人?」、「ええっと、雪の研究をした人」、「あ。聞いたことある」、「うん、寺田寅彦の弟子で」、「そうそう。随筆もうまいんだよね。立春の日に卵が立つという話、教科書に載ってなかった?」、「その人! ええと、なんていう名前だったっけ」
「…思い出してればもう言ってるって」
そりゃそうだ。

反則技

それからまた話題はうつり、しばらく別のことを話していたのですが、どうも気になります。
思い出せないというのは気持ち悪いものです。
とうとう参加者の一人、主婦のKさんにいいました。
「あの、Kさん、すみませんが、だんなさんに電話してさっきの科学者の名前、聞いてみてくれません?」

「え゛〜?」

Kさんは躊躇しています。
あたりまえですね。
飲み会中の奥さんからへんな電話がかかってきたらダンナさんもびっくり、インド人もびっくりでしょう。
ちなみに、「ダンナ」はもとは仏教用語で、サンスクリット語(インドの言語の一つ。経典はこれでかかれている。インテリの言語なのかな。梵語)の「施しをする人」を意味する「ダーナ」の音訳だそうです。
閑話休題
しかし、私としては、この気持ち悪さを早くどうにかしたい。必死でお願いしました。
(つづく)

今日の猫(写真日記猫

どこかの公園で。
おとなしい奴でした。

(つづき)「ほら、Kさんのダンナさんインテリだし、

たくさん本を読んでそうだし、きっとわかると思うなぁ。ねぇ、お願いしますよ。ちょっと聞いてみるだけですから」
「…じゃ、かけてみる。待ってて」
村役場が地下にあるため、Kさんは電波の届く場所に遠征してゆきます。
(10分経過)
戻ってきたKさんに早速たずねました。
(つづく)

「ね、どうでした? すぐに教えてくれたでしょ」

Kさんが答えます。
「その人、知ってるって」
「よかったぁ。で、なんという名前でした?」、「知ってるけど、名前がとっさにでてこないって」
(みんなで)「あ〜〜〜ぁ」
まちがいない。妖怪「どわすれ」のしわざです。よくオフ会やバーに出現し、そこにいるすべての人たちの記憶から一番大事なキーワードだけを盗んでゆくいたずらものが、電波にのってKさんの家にも出現したのでしょう。
みんなでくやしがっていると、Kさんが続けます。
「でね、おにいさんに電話して聞いてみるから、あとでまた電話してくれって」、「おにいさんって、あの、大学教授の?」、「そう」
なんだか話がどんどん大きくなっているような気がしますが。
(さらに数十分経過)
はなしも飲みも一段落。「じゃあカラオケでも」というながれになり、村役場から地上にでました。
早速Kさんがダンナさんに電話しています。みんな固唾をのんで見守っていました。
電話をきったKさんをみると勝利の笑みをうかべています。
Kさんをとりかこむと、Kさん、
「それでは発表します。…いい?」
「いい、いい。いいからはやく」
「コホン。はい、…中谷宇吉郎です」
(みんなで)「あ〜〜〜ぁ」

そうでしたそうでした。

ナカヤ・ダイアグラムの中谷宇吉郎じゃないですか。
なんで思い出さなかったんだろう。不思議になる(いやだからそりゃ妖怪のせいですって)と同時に、Kさんのダンナさんは大学教授のおにいさん(きっと即答だったでしょうね)に質問の理由をどう説明したのか気になったのでした。

(オワリ)