コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

心理学はなにを解明してきたか

仕事をさぼり喫茶店で一服していると、隣の若いサラリーマンたちの会話が耳に入ってきた。
「オレはね、大学で心理学を専攻したから、人の心の動きはわかるんだよ。こういう会話をしていてもね」
大したものだ。心理学というのはすごい学問だな。人の心がわかるとは。もちろんそれが勘違いでなければ、だが。
筒井康隆は多くの意欲的な実験作を書いた、好きな作家である。
彼は若いころにフロイト精神分析理論に傾倒し、作品にはその影響が見えかくれする。精神分析や夢判断そのものがでてくる小説もある。
しかし、フロイトの理論は、今ではまったく根拠のない妄説とされているのだ。
まず、幼児期の好ましくない体験を無意識が隠蔽し、その結果行動に異常がでるという現象は存在しない。また、夢は無意識からのメッセージを象徴化したものなどではない。簡単にいえば、人間はフロイトが示すよりもはるかに即物的な存在である。
筒井は昔「精神分析のせいで他人の行動の意図がわかりすぎ困る」と書いていたが、それは単に自分の思いこみの投影にすぎなかったわけだ。
勝手な思いこみを投影するだけなら、心理学など学ばない方がましだと思う。