ミクロとマクロ
『ドーキンスVS.グールド』(キム・ステルレルニー ちくま学芸文庫)読了。進化論界の二大スター、リチャード・ドーキンスとスティーブン・ジェイ・グールドのあいだにくりひろげられた論争を、ふたりの科学的な主張を中心に紹介している。著者は哲学教授で、どちらかといえばドーキンスの主張に利があるとかんがえているようだが、それは最後にすこしだけふれられる程度で、全編にわたり双方の主張を公平かつ丁寧に説明している。
一読しておもうのは、ふたりの主張にはさほど差がないということである。野球にたとえれば、内野手と外野手のどちらが竹馬がうまいかを比較している感じ。関係ないよ。むしろ、大規模な環境変化による絶滅等はグールドの説を、安定した環境での適応にはドーキンスの説をとれば、進化の統一理論ができそうだ。大体、ひとつの原因だけで進化がおこるわけ、ないじゃないか。
これは多分、ふたりの科学や科学啓蒙に対する姿勢のちがいがおこした政治的論争である。
ストイックに科学を語るグールドには、遺伝子の擬人化も辞さないドーキンスがゆるせなかった。グールドが存命なら「なかよくしなさい」と意見してやったのに。残念。
画像
鳥。
書籍データ
ドーキンスvs.グールドposted with 簡単リンクくん at 2005. 5. 1