コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

言語学とは何で「ない」か。

『はじめての言語学』(黒田龍之助 講談社現代新書)読了。
あることがらを説明するには、普通はそれがなにであるか特徴をあげ説明する。しかし逆に、それはなにでないかを説明し理解をうながすやりかたもある。
有名なものでは山本夏彦さんの「暮しの手帖」解説がある。いわく、「暮しの手帖」には小説がない、性の話題がない、芸能人のゴシップがない。なにより広告がない…。
本書ではまず、誤解されることのおおい言語学という分野について、世にあまたある思いこみをひとつひとつ否定してゆくことで言語学の性格と目指すところ、そして魅力を浮きぼりにしてゆく。いわく、言語学の主要テーマは言語教育ではない、語源研究でも学校文法でもない、文学でも通訳でもない。言語学は言語間の優劣を決定しないし、ことばの美醜を定義することなど断じてしない。
ではいったい言語学はなにをしているのか。
さてここからが本領発揮だ。黒田は抑制あるユーモアのきいた文体を駆使し、ソシュール、音韻、チョムスキー言語学の多様な研究を平易に説明してゆく。いやこれが大変わかりやすいのだ。
一度この人の講義にまぎれこんでみたくなったよ。

書籍データ

はじめての言語学(講談社現代新書 1701)
黒田竜之助著

出版社 講談社
発売日 2004.01
価格  ¥ 756(¥ 720)
ISBN  4061497014

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