コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

スはスペースのス

帰省ついでに水郷柳川により、白秋記念館を見てウナギのセイロ蒸しを食べた。
食後散策していると、有明海の産物を壁に描いた居酒屋があり、そのなかに「輪毛尻巣」とある。イソギンチャクの味噌佃煮のことで、「わけのしんのす」と読む。昔「若者の尻の穴」という意味だと教わった。
なぜ食物にこの名前なのか。イソギンチャクは腔腸動物なので、上についた口は肛門兼用だが、そういう意味ではあるまい。それに、なぜ「若者」なのだ。古来有明海沿岸には御稚児さん趣味があるのか。あるいは「じじのしんのす」という食べものが別にあるとか。
それは食いたくね〜。
形状を考えると、今回見た表記「輪毛尻巣」が正しいような気がする。つまり「周囲に毛がはえた尻の穴」。
言いえて妙だが、ますます食いたくね〜。
おもしろいのは「す」だ。北部九州では穴のことを「す」よぶ。子供のころ「鼻のす」と言われておどろいたが、鼻孔のことだった。
しかし考えると、標準語でも「す」は穴状のものである。動物の「巣」や茶碗蒸しの「ス」などは、うつろな形状が共通している。
方言に昔の用法が保存されていることがよくある。これはその一例だろう。

画像

輪毛尻巣。