生態系とお約束
昭和六十三年に上京したときには、文化のみならず、自然のちがいにもおどろかされた。そしてドラマに登場する自然は関東のものなのだと実感した。
数年暮らすうちにすっかり忘れていたが、先日帰省した際に逆の印象をうけ、十七年前のおどろきを思いだした。忘れないうちに書きとめておく。
日没時刻
当然だが、九州は日の出も日没もおそい。
「夕方五時までに帰りなさい」というのは、九州の子供にとって実に不条理な言いつけだ。
桜
九州の桜の開花は関東より十日から二週間ほど早い。上京前は、桜舞う入学式など演出のためのウソだと思っていた。
梅雨
関東の梅雨はじめじめとぐずついた天気がつづき寒い。蒸し暑く雨がザーザーふる、亜熱帯の雨期に似た九州の梅雨になじんた身には関東の梅雨はつらかった。
セミ
マンガにでてくるセミのなき声がたいてい「ミーンミーン」なのが不思議だった。九州にはアブラゼミが多く、蝉時雨に耳をすませても決して「ミーンミーン」とは聞こえない。
これは「ジージー」ではセミの声だとわかりにくいため、あえてそう表現しているのかと思っていた。
画像
九州でよく見るシオカラトンボ。ムギワラトンボはメス。