コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

はやりうた

すこし前、『桜』(コブクロ)という歌をよく街で耳にした。

名もない花には名前を付けましょう

これを聞くと、母に何度も聞かされた昭和天皇の逸話を思いだす。母から聞いた話はこうだ。

熱心に植物観察をしている昭和天皇におつきの者が「陛下は名もなき雑草にも愛情をそそがれ」というと、昭和天皇こたえて、「名もない草なんてものはないんだ。君が知らないだけだ」。

しかし、『サライ』2006年16号の昭和天皇特集*1にはこうあった。

昭和天皇が地方をご視察中、ある植物の名を問われた訪問先の職員が「雑草でございます」と申し上げると、「雑草とはどんな草か」と再び尋ねられ、職員が恐懼(きょうく)した話は有名だ。

比較すると、母の話の昭和天皇は多弁すぎる。おそらく『サライ』のものがより実話に近いのだろう。名もなき一民草(いちたみぐさ)としては母の話を好むが。
問題はこの逸話のせいで歌が楽しめないことだ。「名前を付ける? 新種発見か、すげえな」と茶化したくなる。
そしてこの「あたらしい神話」ももう過去のものなのだな、と少し感傷的になる。
蝉時雨昭和も遠くなりにけり  秋穂

画像

雲。

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