コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

もののみえかた

数学や物理の解説書を読んでいると、昔はバラバラだった各種理論が、より整合性のある一つの大きな理論にまとまる、という話によくであう。
こういう話を読むと、もちろん感動するのだが、わりきれないものも感じてしまう。
ひょっとしてそれは、生物の知覚と思考がもたらした錯覚ではないのか。
生物は外部世界を知るのに五感のみを、思考には脳のみをつかう。人間の知覚や思考はすべてこれらの制限をうけている。この制限により思考が限定され、閉じていないものを「閉じた」と感じていることはないだろうか。かつての人類が、世界は地球だけで閉じていると感じていたように。
あやうい一例を。さくらももこの『そういうふうにできている』(新潮文庫)は出産の体験をつづった好著だが、百十四ページからの「意識」云々の話はカスだ。麻酔によるトリップ中に感じた世界との一体感を真理だと錯覚し、誠実に記述しているのだ。読むと悲しくなってくる。
あの客観性の権化のようなさくらにして自己の感覚と脳にあっさりだまされ、「自分は今、実在の世界を探求しているのか、それとも単に自己の内部世界をみているのか」と省察する余裕を失ったのかと。

書籍データ

そういうふうにできている(新潮文庫)
さくらももこ

出版社 新潮社
発売日 1999.07
価格  ¥ 460(¥ 438)
ISBN  4101388210

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