コールスロー

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みえない言論統制

『中国の大盗賊 完全版』(高島俊男 講談社現代新書)読了。支那では古来一貫して盗賊が成り上がり皇帝となってきた。そういう盗賊皇帝たちの歴史をみることで支那の本質をわかりやすくかつユーモアをまじえつたえてゆく好著。
一読してこれは千九百八十九年に出版された前版とは別の本だと思った。まず文章のノリがちがう。前回も当然高島節横溢のわかりやすい内容であったが、今回はそれにくわえ、文章がいきいきと躍動している。
また、本の性格もずいぶんちがう。カバーしている範囲はおなじなのだが、前版は歴史的記述を説明するだけで「ちょうど時間となりました」となってしまった感がある。新版で一番おもしろいのは、毛沢東までふくめた盗賊皇帝の歴史をみとおし、支那(高島はこの言葉を使いたかっただろう)という地域の本質に切りこんでゆくところなのだ。
なぜこれが十五年前に出版できなかったのだろう。規定枚数の二百七十枚を大幅に超過する 四百二十枚で脱稿した高島もわるいが、社会情勢も関係している。当時は中国の批判めいたことを書けば著者出版社ともに右翼のレッテルをはられ黙殺される時代だった。今はまだましになったのかな。

書籍データ

中国の大盗賊(講談社現代新書)
高島 俊男 著

出版社 講談社
発売日 
価格  ¥ 840(¥ 800)
ISBN  4061497464

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