呉善花さん(2)
『スカートの風』が人気を博したのは、ひとつには、それまでなんとなく釈然としなかった「ことばが通じても気持ちが通じない」日本人と韓国人の意志疎通不全の原因を、まるでたなごころをしめすように説明しているところにある。
呉さんは韓国のいわゆるハングル世代で、小学校の教室の前には「打倒北朝鮮共産主義」、「打倒日本帝国主義」と書いた額がかかげられていたらしい*1。日帝支配三十六年云々の反日教育を受けていたわけだ。その後来日し、さまざまな経験ののち日本を理解し、韓国人ホステスたちに日本語とともに「日本人はこういう考えかたをするから、こう接しなきゃダメ」などと教えるまでになる。いわば両極端を知った人なのだ。呉さんの著作には、そういう人しか気づかないような洞察があり、読者は毎ページで目からうろこを落とすことになる。
あとひとつは文章の魅力だ。
呉さんの文章は大変魅力的である。ちょっと見にはただの模範的な日本語文なのだが、読んでいるうちに著者の誠実さや魅力がつたわってくる。この達意の文章のファンも多いのではないか。
字数ぎれ。また次の機会に。
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赤タンタン麺。