コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

人生をたのしむことに頑固。―『リンボウ先生の役立たず試乗記』(徳間書店 1600円)

リンボウ先生こと書誌学者の林望さんは自動車の運転がだいすきだ。大学生のころから車を乗りまわし、総運転距離は六十万キロをこえるほど。ただしいわゆるカーマニアではなく、装備に凝ったり頻繁に洗車したりはしない。あくまでも道具としての自動車を運転することをたのしむ、真の自動車のりなのである。
そういう人が日本の歴史的名車から外国のファミリーカーまで、様々な車に乗りそれぞれの「乗り味」を独断と偏見でしるす。むつかしい話は一切ナシ。ただ「その車とたのしい時間をすごせるか」だけを判断の根拠とし、あのリンボウ節で快刀乱麻解説してゆく。「たのしくない」車ならBMWだろうがロータリーだろうが容赦はしない。また、日本でジャガーやMBの左ハンドルに乗り、車を見栄の道具にするために安全をかえりみないユーザーやディーラも一刀両断だ。カー侍林望といったおもむき。これが滅法おもしろい。ついている写真も美しい。
完璧なペーパードライバーのわたしが何度も夢中で読みかえしたこの本、残念ながら現在品切れとなっている。ここで「よきものかならずしも世間に受けいれられず」と名伯楽リンボウ先生よろしく慨嘆することしきり。

画像

表紙。

書籍データ

リンボウ先生の役立たず試乗記
林 望
徳間書店 (1997.5)
この本は現在お取り扱いできません。

「現在お取り扱いができません」だそうです。求む増刷、あるいは文庫化。ま、わたしは持っているからいいけど…。