コールスロー

世界というジグソーパズルの1ピース

ドナルド・キーンさんが日本を好きでいてくれる心強さ

『二つの母国に生きて』 (ドナルド・キーン 朝日選書)。
キーンは1922年生まれだから、当年とって八十三歳。日本文学を数多く海外に紹介している日本文学研究家の、これは随想である。
内容は文学に限らず、歌舞伎、能、日本家屋、みやげ、浮世絵、マスコミ、戦争(二次大戦中に日本兵捕虜の尋問や日記等遺留品の翻訳にたずさわっていた)、と多様だ。
これらどの話題にも、著者の教養の深さと、日本とアメリカという「二つの母国」を持つ者の視野の広さがあらわれ、読後には西洋文化と対峙した日本文化の性格がはっきりとした像をむすぶ。読者は「もののみえたる」人に案内してもらいながら再発見する日本が、すぐれた独自文化を持つ国だと知り、驚く。
しかし一番おもしろいのは、やはり二十世紀文人たちとの交遊の回想だろう。キーンは当時まだめずらしかった「日本文学を研究しているガイジン」という立場にたすけられ、谷崎潤一郎吉田健一三島由紀夫といった大作家と親交をむすぶ。特に三島、吉田、福田恒存などがいた鉢の木会の盛衰と、なにより三島との友情の話は当事者の実感があり興味深い。
そろそろ食わずぎらいをやめ三島を読もう。

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サツキ。

書籍データ

二つの母国に生きて
Keene Donald
朝日新聞社 (1987.1)
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